さいたま市立病院副院長小山先生が、乳酸加ポストコンディショニングの心保護作用を新しい切り口で示した論文を発表

Possible creatine kinase washout mechanism revealed by postconditioning with lactate-enriched blood in patients experiencing ST-elevation myocardial infarctions

 

乳酸加ポストコンディショニングによって見えてきた、再灌流療法に伴うクレアチンキナーゼ洗い出し効果のありのままの姿

Int J Cardiol 2014; 177:492-3

 

急性心筋梗塞患者に対する再灌流療法は、CK放出のピークを早めることが広く知られていますが、それが洗い出し効果によるものと長く考えられてきました。しかし、primary PCIに成功した55例の急性心筋梗塞患者に対する私どもの研究から、CK放出のピークは、発症から7時間程度で治療された患者で最も遅く、それより治療が早くても遅くてもCK放出のピークまでの時間は直線的に短縮してゆくことがわかりました(Int J Cardiol 2012; 155:335-337.)。この2相性の関係は、単純な洗い出し効果でCK放出のピークが早まっているとする従来の考えでは説明ができず、致死的再灌流傷害による早期のCK放出効果の相当程度の関与があって初めて説明できる現象であることを報告しました(詳細は私の論文をご参照下さい)。もしその説明が正しければ、致死的再灌流傷害を起こさないように再灌流ができれば、その2相性の関係も消失せしめることができるはずです。

今回私どもは、乳酸加ポストコンディショニングを用いて再灌流療法を行った46例のST上昇型心筋梗塞患者で、治療までの時間とCK放出のピークまでの時間の関係を調べました。その結果、両者間の2相性の関係はきれいに解消されていました。2相性の関係のかわりに得られたのは、CK放出までの時間が一様に早い、若干の右肩下がり(治療までの時間が長ければCKはより早く放出される)の直線的な相関関係でした(この負の相関が得られる理由については論文を参照下さい)。この結果は、従来の治療で見られたCK放出のピークの2相性の変化が、致死的再灌流傷害による早期CK放出効果の相当程度の関与があって初めて説明できる現象であるとする私の考えを支持するものであると同時に、乳酸加ポストコンディショニングが、致死的再灌流傷害抑止に有効であることを間接的に証明したことになる結果であると考えました。

また今回の論文の中では、乳酸加ポストコンディショニングによって治療を受けた全46例の、PCI終了時の責任冠動脈のcorrected TIMI frame countの平均値が17.8 ± 10.3フレームであることも同時に示しました。その正常値が21フレームであることを考えれば、いかに良好な冠動脈血流の再開が、微小循環血流も含めて得られているかがわかります。この極めて良好な血流の再開が、洗い出し効果を一層強め、今回の非常に明瞭な結果につながったとも考えています。

この新しい治療法では、小規模研究ながら、心筋梗塞後早期の炎症も抑えられることを私どもは既に示しており、今後さらに多方面から再灌流傷害が抑えられることを示してゆきたいと考えています。

 

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