遠山周吾先生がヒトiPS細胞におけるグルタミン代謝の特徴を利用し安全性を高めた心筋細胞の作製に成功。 Cell Metabolismに公開されました

ヒトiPS細胞におけるグルタミン代謝の特徴を利用し安全性を高めた心筋細胞の作製に成功

-心臓の再生医療の実現化を大きく加速-

 

慶應義塾大学医学部循環器内科学教室の遠山周吾助教、藤田淳特任講師、福田恵一教授らの研究グループと、慶應義塾大学医学部医化学教室の末松誠教授(当時。現AMED理事長)らの研究グループは、ヒトiPS細胞由来の分化細胞集団から、臨床応用の課題であった腫瘍化の原因となる細胞を高水準で除去し、より安全性を高めた心筋細胞を作製することに成功しました。

心筋梗塞、拡張型心筋症などが重症化すると数億個もの心筋細胞が失われてしまいますが、ヒトを含む哺乳類は失われた心筋細胞を元に戻す自己再生能力を持っていません。胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、理論的に体を構成するすべての細胞種へと分化できる多能性を持つことから、このような疾患に対し、体外で作製した治療細胞を体内に移入することによる「再生医療」の実現が期待されています。しかし、すべての未分化幹細胞を目的とする細胞へ分化誘導することは困難であり、分化できなかった細胞の中に腫瘍形成の原因となる細胞が混入してしまうことが実現化の大きなハードルになっていました。

今回、共同研究グループは、ヒトES・iPS細胞におけるグルコースおよびグルタミン代謝の役割を明らかにし、培養液から全ての細胞の生存に必須とされるグルコースおよびグルタミンを除去し、この代替物として心筋細胞だけが効率よく利用することのできる乳酸を添加する工夫をしました。その結果、腫瘍形成の原因となる未分化幹細胞を完全に死滅させ、心筋細胞だけを生きたまま選別する方法を確立することに成功しました。これによって、特殊な培養液に交換するという極めて単純な工程によって、臨床応用を視野に入れた高純度の心筋細胞を作製することが可能となりました。この研究成果は、安全性の高い心筋細胞を比較的安価かつ簡便に入手するという大きな課題を解決し、心臓の再生医療の実現化を大きく加速するものと考えます。

本研究成果は2016年3月31日正午(米国東部時間)に、米科学誌「Cell Metabolism」に掲載されました

 

 

Cell Metabolism

http://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(16)30104-8

 

慶應義塾大学プレスリリース

http://www.keio.ac.jp/ja/press_release/2016/osa3qr000001ijkw.html

 

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