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不整脈

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担当医師
髙月 誠司、木村 雄弘、勝俣 良紀、西山 崇比古

心臓は電気の流れによって収縮、拡張を繰り返すことで、全身に血液を送り出しています。正常では1分間に60~100回、1日ではおよそ10万回も規則正しく拍動しています。

しかし、心臓をコントロールする電気の流れに異常が起こり、脈が極端に速くなったり遅くなったり、あるいは不規則になることを「不整脈」と呼びます。この不整脈により「動悸」「胸痛」「息切れ」「失神」といった症状や、心不全や脳梗塞などを発症する場合があります。

カテーテルアブレーション

慶應義塾大学では、1993年より不整脈に対するカテーテルアブレーションを行っています。カテーテルアブレーションはカテーテルの先端についた電極から高周波という特殊な電流を通電して、不整脈の原因となる回路、部位を焼灼し不整脈を根治する方法です。対象となる不整脈は、心房細動、心房粗動、発作性上室性頻拍症(房室結節回帰性頻拍、WPW症候群、心房頻拍)、心室頻拍などがあります。

  カテーテルアブレーションの対象疾患

心房細動に対するカテーテルアブレーション

心房細動の患者様は非常に多く、推定100万人以上の方が罹患していると言われています。心房細動は動悸や息切れといった症状を引き起こして生活に支障を来すことや、脳梗塞を合併することがあるため、適切な治療を受けることが大切です。心房細動の多くは、左心房へつながる肺静脈という血管に迷入した心筋から発生することが分かっています。カテーテルにより肺静脈周囲の心筋を焼灼あるいは冷却し、肺静脈から左心房へ異常な電気興奮が伝わらなくすることで心房細動を治療できることが明らかとなっています。

  心房細動(アブレーション治療など)

冷凍アブレーション

従来の高周波アブレーションだけでなく、冷凍バルーン(クライオバルーン)と呼ばれる、バルーン形状型カテーテルを用いた肺静脈隔離術にも積極的に取り組んでおります。この治療は液化亜酸化窒素ガスによって冷却されたバルーンを用いて、肺静脈周囲の心筋を冷やすことで肺静脈と左心房の電気的交通を遮断します。手技としても簡便かつ安全であり、従来の治療と同等の治療成績をあげることができるため、冷凍アブレーションは発作性心房細動に対する標準的治療の一つとなっています。

POLARxTM CRYOABLATION SYSTM

Boston Scientificより提供

3次元マッピングシステム

不整脈の回路をコンピューター上に3次元表示する様々なマッピングシステムや最新のアブレーションカテーテルを用いて治療を行っています。これらの最先端の技術により不整脈の原因を効率的に解明し、安全かつ効率的なアブレーション治療を実践しています。

RHYTHMIA HDx™ Mapping System

Boston Scientificより提供

CARTO®3 Systemと高周波カテーテル

Johnson & Johnsonより提供

患者様にやさしいアブレーション治療

当院では、上記のような最新のシステムを用いて放射線被ばくを可能な限り減らす、治療中の造影剤使用量を最低限にする、血管内止血デバイスを用いることでアブレーション術後の安静時間(ベッド上で仰臥位になっている時間)を短時間にする、といった患者様にやさしいアブレーション治療に努めています。我々の施設では、訓練された不整脈専門医が常駐し、さらに循環器専門医、専修医、看護師、臨床工学技士、放射線技師で治療・検査を行っています。

  当院の実績

デバイス治療

不整脈非薬物治療のもう一つの柱、ペースメーカー・植え込み型除細動器(ICD)・心室再同期療法(CRT)を循環器内科では積極的に植え込んでいます。最新のペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法のためのCRT-Dは、たえず機器本体および患者様の心臓の状況を確認し記録しています。これら植え込み機器の情報は、携帯電話回線を通じて自宅から専用のサーバーに送られ、不整脈が検出された時などに医療従事者が情報を確認できます。この遠隔モニタリングを利用することにより、患者様の半数以上は他府県に居住されていますが、必要に応じて、外来受診日より前もって、植え込み機器の情報を確認することが可能です。

  ペースメーカー

遠隔モニタリングシステム

Medtronicより提供

リードレスペースメーカー

近年ではリードレスペースメーカーと呼ばれる小型のカプセル型のペースメーカーを、カテーテルを用いて心臓内に留置することも可能となっています。従来型のペースメーカーと異なり、静脈を介するリードの心臓内への留置や、本体を皮下に植え込む外科的な手術を行う必要がありません。そのため、胸の傷もなく、本体による皮膚の膨らみもありません。当院は都内でも有数のリードレスメースメーカー植込み術の件数を誇っています。

リードレスペースメーカー Micra®

Medtronicより提供

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リード抜去

不整脈に対するデバイス治療の発展と普及に伴い、デバイスに関連した合併症が近年増加しています。植え込まれた機器に細菌などの微生物が感染した場合、点滴の抗生物質のみによる治療では不十分なことが多く、このような場合にはデバイスの抜去が必要になります。従来、デバイス抜去のためには心臓や血管内に癒着した部分をとるために長時間の開胸手術が必要とされてきました。現在では、デバイス抜去のための専用の機器を使用し、低侵襲な方法での治療が可能となっています。レーザーシースと呼ばれる筒状の装置を使用し、先端からエキシマレーザーを発射して癒着部位を蒸散させることで小さな傷口からデバイスを抜去することが可能です。そのほかにも状態に応じて様々な専用の機器を使用します。また、高度な技術が必要な手術でもあるため、常に心臓血管外科、麻酔科など各専門科と連携しながら治療を行っています。

Excimer laserを用いたリード抜去

Philipsより提供

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外来での不整脈診断

当院では、不整脈外来で携帯型心電計やスマートウォッチを用いた未診断の不整脈の検査を積極的に行っております。更に、失神、潜因性脳梗塞の原因検索として植え込み型モニタによる診断も可能です。動悸の症状を認めているのにも関わらず、不整脈の診断がついていない方は、外来担当医に御相談ください。

  カルジオフォン(携帯型心電図記録伝送装置)

遺伝性不整脈

心臓イオンチャネルの遺伝子異常により家族性に不整脈が出現する場合があります。特に近親者に30-40代までの若年性突然死をされた方がいる場合や、心室性不整脈、心房細動、ペースメーカーを必要とする疾患が家族性、若年性に発症している場合、遺伝子異常が背景にある可能性が高くなります。病気の原因遺伝子を祖先から代々受け継いでいても、環境要因によって症状が軽く、また日によっては心電図変化が明確でない場合もあり、運動負荷や薬物負荷試験などによって確定診断を行うことがあります。変異のある遺伝子の違いによって治療法や生活上の注意点が異なる場合もあり、遺伝子検査から有用な情報が得られることがあります。当院では、臨床遺伝専門医と連携して、適切な遺伝カウンセリングのもと、遺伝学的検査を実施し、結果を患者様及び紹介医にお返しする体制を整えています。特に、QT延長症候群など、遺伝診断が重要な疾患では、保険診療として検査を進めます。また、検査結果を踏まえて、ご本人のみならず、血縁の方々の診察や検査を進めることも可能です。

  QT延長症候群

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