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心臓カテーテル治療

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担当医師
林田 健太郎、金澤 英明、安西 淳、小平 真幸

心臓は全身に血液を送り出すポンプですが、心臓から大動脈が出た直後に冠動脈が分岐して心臓に動脈血を送り込んでいます。この冠動脈に高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙等によって動脈硬化をきたすと内腔が狭くなるもしくは、突然詰まることがあります。このような疾患を冠動脈疾患・虚血性心疾患と呼んでいます。冠動脈疾患・虚血性心疾患は心疾患の中でも最も有病率および死因として頻度が高くなります。

冠動脈疾患
Coronary Artery Disease

当院の冠動脈疾患に対するカテーテル検査および治療(経皮的冠動脈形成術:PCI)は、より安全に、より低侵襲に、を合言葉に24時間365日体制で行っております。近年、様々な臨床研究に基づいて、虚血評価による治療適応の決定がガイドラインで推奨されており、当院においてもハートチームで個々の患者さんの治療適応を慎重に協議しながらPCIを行っております。救急患者さんの受け入れも積極的に行っており、毎年200件以上のPCIを行っております。土曜日(病院休診日の第一および第三土曜日は除く)にも検査および治療を行っており、平日には入院が難しい患者さんにも対応させて頂いております。

橈骨動脈アプローチによる心臓カテーテル検査および治療

カテーテルを用いた冠動脈造影検査、あるいは冠動脈形成術(ステント治療)を行う際、カテーテルをどこから入れるのかという点は、患者さんにとって非常に重要な問題となり得ます。

以前は大腿動脈という足の付け根(鼠径部)にある太い動脈を用いることがほとんどでしたが、現在では橈骨動脈と呼ばれる手首にある血管からカテーテルを入れることが主流となっています。大腿動脈は血管が太く、カテーテルが安定するため、手技自体が容易になりますが、カテーテルを抜去して止血を行った後に長期の安静が必要となり、数時間程度、寝たまま動けない状態を余儀なくされてしまいます。一方で、橈骨動脈を用いる場合は、大腿動脈と比較して血管が細いために、使用できるカテーテルの太さが限られること、患者さんによっては血管が極端に曲がっていて、カテーテルの冠動脈への到達が困難な場合があること、カテーテルの操作が難しくなる場合があることなどの制限もありますが、カテーテル検査・治療の後にすぐに動くことができ、活動制限がほとんど無いこと、出血性合併症が問題になりにくいことなどが最大の長所と言えます。入院期間についても、大腿動脈を用いた場合と比較して、より短くすることが可能です。最近ではカテーテルそのものやシステムの精度、安定性が向上し、冠動脈検査やステント治療のほとんどが橈骨動脈からのアプローチで可能となりました。

当院でも、透析を行っている患者さん、その他橈骨動脈を使用することが好ましくない患者さんを除くほとんどの患者さんにこの橈骨動脈を用いたカテーテル検査・ステント治療を行っており、患者さんにより負担の少ない医療を目指しております。

橈骨動脈アプローチイメージ図

石灰化病変に対する治療

当院では石灰化を強く伴い、ステント(金属の筒)を留置する前にバルーン(風船)による拡張では不十分と思われる症例では積極的にロータブレーターやダイヤモンドバックと呼ばれる、石を砕く器械を使用後、ステント留置を行い、良好な成績を収めております。

ロータブレーター 
Rotational atherectomy

ロータブレーター(Rotational atherectomy)は高速回転冠動脈アテレクトミーの略で、先端に多数のダイヤモンド粒子が植え込まれたバーを1分間に14万~19万回転させながら石灰化病変を切削していきます。イメージとしては歯科で使用するドリルに似ていると思います。血管壁の石灰化した硬い部分だけが削れて、血管壁の柔らかい部分は切削されないという優れた特長があります。

ダイヤモンドバック 
Orbital atherectomy

ダイヤモンドバックとは、上記のロータブレーターに加えて、最近本邦にて使用可能となった高度石灰化病変に対する治療器具です。先端にダイヤモンドで構成されたクラウンと呼ばれる部分があり、このクラウンが軌道回転して石灰化病変を大きく削ることができます。ロータブレーターはバーサイズと同じ大きさで前方向にしか削ることができませんが、ダイヤモンドバックは軌道回転することでクラウンサイズよりも大きく削ることができ、また前方向だけでなく後方向に引いても削ることができるのが特徴です。病変形態に応じてロータブレーターとダイヤモンドバックを使い分けて、あるいは併用することでより安全な石灰化病変の切削を心がけています。

ダイヤモンドバック

左冠動脈主幹部病変に対する治療

左冠動脈主幹部(LMT)は、左冠動脈の起始部に位置し、左前下行枝と回旋枝に分岐します。それ故に、LMTの狭窄は広範囲の心筋虚血を引き起こすため、特に危険で突然死の原因となり得ます。LMTに対する治療法には冠動脈バイパス手術もありますが、薬剤溶出性ステントや治療技術の発達により、カテーテル治療でも良好な成績が得られるようになってきております。
当院でもPCIに適する症例か否かをハートチームで十分に協議し、LMT病変へのカテーテル治療を行っております。

慢性完全閉塞病変
Chronic Total Occlusion

慢性完全閉塞病変(Chronic Total Occlusion: CTO)は3カ月以上(慢性)にわたり、冠動脈が閉塞している病変です。CTOに対する経皮的冠動脈形成術(PCI)は、冠動脈造影のみでは血管走行を完全に把握する事が困難であるため、手技を行う医師の熟練した技術および適切な判断力が成功には不可欠な手技と言えます。最近では、冠動脈CTの使用、薬剤溶出性ステントの留置および側副血行路を経由しての逆行性アプローチ技術の標準化に伴い、成功率および慢性期の成績も向上しています。最近3年間の当院の急性期の開通率は90%以上を維持しており、CTOに対する血行再建が必要と判断した場合には、カテーテルチームのスタッフが合併症のリスク などにつき十分話をさせて頂いてから施行しています。

慢性完全閉塞病変治療

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虚血評価に基づく治療適応決定

冠動脈造影により冠動脈内の狭窄度は把握することができますが、その狭窄でどのくらい血流量が阻害され、どのくらい組織や細胞が虚血に陥っているかまではわかりません。そのため、狭窄度が中等度である場合や狭窄を認める部分が複数ある場合にその部分が実際に症状の原因となっているか判断できない場合がありました。
近年、FAME試験(NEJM 2009 etc)など様々な臨床試験により、冠動脈血流予備量(fractional flow reserve:FFR)による虚血評価に基づいた治療戦略が強く推奨されるようになってきております。当院では下記に示す様々な医療機器デバイスを用いて、FFRを測定し、冠動脈狭窄の機能的重症度を評価することで、治療適応決定の判断材料の一つとしております。

プレッシャーワイヤー(FFR/iFR/RFR)

プレッシャーワイヤーは、先端に圧センサーがついたガイドワイヤーで、冠動脈内圧を測定し、狭窄部位の遠位部と近位部の圧を比で算出することで血流量が狭窄部位でどのくらい低下しているか評価することのできる検査です。冠動脈造影後に続けてプレッシャーワイヤーを挿入して虚血評価を行うことで速やかに治療適応を判断することが可能です。

アデノシンやニコランジルを投与して最大血流時に測定するFFRが基本となりますが、冠拡張剤負荷を行わずに安静時に測定するiFR/RFRなどの測定も積極的に行っております。

RFR(冠拡張剤を要さない冠動脈狭窄生理学的診断法)

FFRct

心臓CTは冠動脈の形態(狭窄の程度)評価に優れた診断法ですが、虚血評価(その狭窄により心臓に血液不足が生じているか否か)ができないため、治療方針を決定するために心臓カテーテル検査などの追加検査を行う必要がありました。

FFRctは心臓CT画像を元に、コンピュータ上に冠動脈デジタル3Dモデルを作成し、冠血流予備量比 (FFR) を数値流体力学により解析、算出するプログラムです。外来通院で施行可能な心臓CT検査一つで冠動脈の狭窄と血流を同時に評価できるため、追加で来院する必要がなく、患者さんにもメリットがあると考えます。

アンギオFFR

通常取られる冠動脈造影画像から非侵襲的にFFRを算出するシステムです。ワイヤと充血剤を必要とせず、多くの枝を迅速にオンサイトで測定可能です。

ワイヤや冠充血剤を要さないCathWorks FFRangioシステム

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ハートチームによる治療方針決定

重症冠動脈疾患の患者に対して、ハートチームによる議論を経て最適な治療法を提供しています。

心臓カテーテル治療外来について

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